アルミホイールの製法にもいろいろありますが、中でもユニークなのは鍛造と鋳造の中間的な存在とも言える半溶融鍛造製法でしょうか。
通常の鍛造製法がアルミ合金に圧力をかけながら成形していくのに対し、半溶融鍛造製法は、溶けたアルミニウム合金に圧力をかけながら成型していく方法です。
溶けたアルミニュウム合金を金型の中に注入し、合金が固まっていく過程で300-1500㎏/cm2の高圧をかけることから、高圧鍛造法とも呼ばれているものです。
スピードスターレーシング(SSR)は、このSSF製法によるホイールをいくつもリリースしていました。
今回は、このSSF製法で製造されたホイールの重量計測データをまとめてみました。
当サイトで重量計測データを公開したのは以下の通り、18インチで5つ、17インチで9つ、16インチで3つ、15インチで3つ、合計20の重量計測データです。
〇18インチ
7.20kg SSR TYPE C 7.5J offset+32mm PCD114.3mm-5H →詳細
7.55kg SSR INTEGRAL GTⅡ 7.5J offset+40mm PCD114.3mm-5H →詳細
7.70kg SSR TYPE C 8.5J offset+32mm PCD114.3mm-5H →詳細
8.35kg TANABE SSR TYPE F 8J offset+40mm PCD120mm-5H →詳細
8.45kg TANABE SSR TYPE F 8.5J offset+30mm PCD114.3mm-5H →詳細
〇17インチ
6.05kg SSR TYPE C 8J offset+48mm PCD100mm-5H →詳細
6.50kg SSR TYPE C RACE 7.5J offset+32mm PCD98mm-5H →詳細
6.50kg SSR TYPE C 7.5J offset+48mm PCD114.3mm-5H →詳細
6.70kg SSR TYPE C 7.5J offset+32mm PCD98mm-5H →詳細
6.95kg SSR INTEGRAL GTⅡ 7.5J offset+32mm PCD114.3mm-5H →詳細
7.10kg SSR INTEGRAL GTⅡ 8J offset+40mm PCD114.3mm-5H →詳細
7.20kg TANABE SSR TYPE F 7.5J offset+48mm PCD114.3mm-5H →詳細
7.30kg SSR TYPE C 8.5J offset+30mm PCD114.3mm-5H →詳細
7.30kg FINALSPPED FORGED 8.5J offset+50mm PCD100mm-5H →詳細
7.35kg SSR INTEGRAL GTⅡ 8.5J offset+40mm PCD114.3mm-5H →詳細
〇16インチ
5.40kg SSR TYPE C 7J offset+42mm PCD114.3mm-4H →詳細
5.45kg TANABE SSR TYPE F 7J offset+42mm PCD100mm-4H →詳細
7.35kg SSR INTEGRAL A2 7J offset+45mm PCD114.3mm-4H →詳細
〇15インチ
4.80kg SSR TYPE C 7J offset+42mm PCD114.3mm-4H →詳細
4.80kg SSR Racing Firenza PRO 6.5J offset+33mm PCD100mm-4H →詳細
5.15kg SSR Racing Firenza PRO 7J offset+43mm PCD114.3mm-5H →詳細
20の重量計測データについて、「超軽量」、「軽量」、「普通の重量」別に認定状況を見ると、1つだけ「普通の重量」と認定されたホイールがありますが、それ以外は超軽量と軽量に認定されています。
この状況を見ると、SSF製法のホイールを、「軽量である」と断言してしまっても問題ないでしょう。
ブランド別に重量計測データ見ると、SSR TYPE C(RACE含む)が9つ、次いでSSR INTEGRAL GTⅡの4つ、TANABE SSR TYPE Fの3つ、SSR Racing Firenze PROの2つ、FINALSPPED FORGED、SSR INTEGRAL A2各1つとなっています。
中でも、SSR TYPE Cは、17インチとしては太めな8.5J 幅のものが、唯一軽量認定にとどまった以外は、9つのデータの内8つで超軽量認定となりました。
SSR TYPE Cってやっぱり物凄く軽いのですね~
しかし・・・そんなSSF製法ですが、最近この製法で作られているホイールが、発売されていないように思えるのです。
SSR TYPE Cの後継と言える、SSR TYPE C RSやSSR TYPE Fが、SSF製法であることをアピールしたホイールでしたが、それらも絶版となってしまいました。
現在、TANABEのSSRのサイトを見ても、SSF製法であることを前面に押し出したホイールブランドはなく、「ホイール関連技術情報」のページにもSSF製法の文字すらありません。
何故軽量なSSF製法のホイールは増えていないのでしょうか?
その理由をいろいろ調べてみたのですが、はっきりしたことは分かりませんでした。
ただ、SSR TYPE CからTYPE C RS、TYPE Fに切り替わった時に、ちょっとした違和感を感じたことがあるのです。
その違和感とは、それまで1ピース構造だったものが2ピース構造に変更となったことなのです。
一見1ピースに見えますが、TYPE C RSと(17インチ以上の)TYPE Fは、SSF製法で製造したディスク面と、フローフォーミング製法で製造しHTM熱処理を施したリム部を溶接により接合しています。
何で重量面において有利な1ピース構造から、2ピース構造へと変更したのか?
TYPE Fの17インチサイズ以上への対応から考えると、その答えは「大口径化に対応するため」だったと思っています。
また、HTMという熱処理工程を新たに加えたことから、半溶融鍛造製法だけで作られたインナーリムでは、大口径ホイールを装着する重量級でハイパワーな車両に対応でできなかったのではないか?という穿った見方ができなくないと思うのです。
SSF製法に携わったことのある方々や、現在SSRのホイールを販売しているTANABEの関係者の方しか本当の理由は分からないと思いますが、大口径ホイールが浸透してきた時期、車両重量が軽量なホットハッチがあまり世に出なくなった時期を境に、徐々にSSF製法のホイールが姿を消していったように思えます。