PCDから紐解くWRCグループAマシンのトランスミッションの話し

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当ブログ「ホイールウォッチング レアな車のホイール画像集」という企画では、トヨタ セリカ、三菱 ランサーエボリューション、スバル インプレッサ など、1990年代にWRCを席巻したグループAマシンの特集記事をアップしています。

 

ホイールウォッチング レアな車のホイール画像集 Vol.13 Gr.A三菱ランサーエボリューション6 WRC2001モンテカルロラリー優勝車

ホイールウォッチング レアな車のホイール画像集 Vol.14 Gr.Aスバル インプレッサ555 WRC98アクロポリスラリー優勝車

ホイールウォッチング レアな車のホイール画像集 Vol.15 Gr.Aトヨタ セリカGT-Four ST185 1993年オーストラリアラリー優勝車

ホイールウォッチング レアな車のホイール画像集 Vol.16 Gr.Aトヨタ セリカGT-Four ST205 1995年コルシカラリー優勝車(レプリカ)

ホイールウォッチング レアな車のホイール画像集 Vol.28 Gr.Aスバル レガシィRS 555 1993年ラリーニュージーランド優勝車

ホイールウォッチング レアな車のホイール画像集 Vol.48 Gr.Aトヨタ セリカGT-Four ST165 1990年サファリアラリー優勝車

 

それらの記事の中でも触れているのですが、ベースモデルのPCDが100mm-5Hなのにもかかわらず、グループAマシンのトヨタ セリカ ST165、ST185、ST205のPCDは114.3mm-4Hになっていること。

 

同じく、三菱 ランサーエボリューション6 のグループAマシンは、ベースモデルと同じPCD114.3mmですが、ホイールのボルト穴数がベースモデルの5穴に対して4穴になっていることを指摘しつつも、その理由については分からず終いになっていました。

 

何故トヨタセリカと三菱ランサーエボリューションのWRCグループAマシンのPCDやホイールボルト穴の数がベースモデルのそれと異なるのか?

 

今回は、その理由について推察してみました。

 

 

以前アップした三菱ランサーエボリューション6に関する記事の中では、ベースモデルが5穴なのに、グループAマシンのホイールボルト穴の数が4つな理由を、「ベースモデルもPCD114.3mm-4Hであるランサーエボリューション3以前のグループAマシンの駆動系を熟成させて使い続けているからだろう」と安易に結論づけてしまいましたが、その時から駆動系のパーツ選択の制約から、ベースモデルとグループAマシンに違いが出ているのだろうと考えていました。

 

ということから、当時のWRCグループAマシンのトランスミッションやデファレンシャルといった駆動系の説明が記載されている資料を見つけることが、今回の疑問を解決する近道だろうと考え、いろいろ探してみたのです。

 

その結果、古本屋で見つけたのが、1990年代に発売された、この5冊のWRC特集雑誌です。

WRC グループAマシン特集

 

この雑誌には、当時のWRCグループAマシンのスペックが事細かにまとめられています。

 

特に96-97年シリーズ号には、トヨタ セリカ ST205、三菱ランサーエボリューション4、スバル インプレッサ 555のスペック情報一覧があり、その中に、トヨタ セリカ ST205と三菱ランサーエボリューション4の駆動系は、「4WD 6-speed X-Trac」とあり、スバル インプレッサ 555の駆動系は、「4WD 6-speed Prodrive」と明記されていました。

 

X-Tracとは、モータースポーツ 用車両と高性能乗用車のギアボックスやトランスファーのなどトランスミッションシステムを専門に開発、製造するエクストラックというイギリスの企業のこと。

 

Prodriveは、スバルのグループAマシンの開発製造を行っていたWRCラリー活動の実行部隊だったプロドライブであることはあまりにも有名ですね。

 

「4WD 6-speed X-Trac」は、エクストラック製4WD6速トランスミッションを意味していて、「4WD 6-speed Prodrive」は、プロドライブ製4WD6速トランスミッションを意味しているのでしょう。

 

と言うことは、トヨタ セリカ ST205と三菱ランサーエボリューション4は、どちらも駆動系に、エクストラックという同じ外部企業の製品を導入していて、スバル インプレッサ 555は、プロドライブによる内製の駆動系を採用していたということになります。

 

スバル インプレッサ 555は、プロドライブによる内製だから、ベースモデルと同じPCD100mm-5Hにすることが出来て、外部企業であるエクストラック製の駆動系を導入したトヨタと三菱は、外部企業製であるが故に、ベースモデルと同じPCD、穴数にならなかったと考えられるでしょう。

 

エクストラックの駆動系は汎用品と言うほどでは無いにせよ、わざわざコストをかけてまで、ベースモデルのPCDや穴数に合わせてカスタマイズする意味がないことから、トヨタと三菱はエクストラック仕様のPCD114.3mm-4Hのまま採用したと考えると納得できます。

 

96-97年シリーズ号 以外を見ると、スペック一覧には記載されてはいないのですが、トヨタ セリカ ST165、ST185、三菱ギャラン、ランサーエボリューション1-3とランサーエボリューション5のマシン解説文中にも「X-Trac」の文字が出て来ますので、トヨタと三菱の歴代のWRCグループAマシンは、エクストラック製のトランスミッションを採用していることも分かりました。

 

また、92-93年シリーズ号には、後にインプレッサに搭載されたセミオートマチックのプロドライブ製6速トランスミッションにつながると考えられる、エア圧で作動させるスバル レガシィ用のオートマチックトランスミッションを、プロドライブが開発したとの記事も存在しました。

 

トランスミッションを自社開発したので、ベースモデルと同じPCDを採用出来たスバルと、外部企業が開発したトランスミッションを採用したが故、ベースモデルのPCD、穴数と異なったトヨタと三菱、と言うのが今回探していた答えになると思っています。

 

2020年代のWRCマシンであるトヨタヤリスWRCも市販車とは異なり、PCDは130mm-5Hです。

 

その理由も外部企業が開発した駆動系を採用しているからということなのかもしれませんね。

 

ホイールウォッチング レアな車のホイール画像集 Vol.39 トヨタ GRヤリス

 

 

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