ロープロファイルタイヤがもたらすリスクとエアボリュームの重要性

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今回の話はロープロファイルタイヤがもたらすリスクとエアボリュームの重要性についてです。

 

ロープロファイルタイヤとは、低扁平率のタイヤのことで、扁平率はタイヤの幅に対するタイヤの高さの比率を表す数値です。

偏平率が低いほどタイヤのサイドウォール部が低くなります。

1980年代には扁平率60%、所謂60タイヤでも低扁平と言われていたものが、最近は扁平率35%のタイヤも結構見られるようになりました。

ホイールの外径をインチアップした際に、メーター誤差が生じないよう、代わりにタイヤハイトを下げて対応する必要があるため、ホイールインチアップの流れが加速した1990年代後半あたりから、タイヤの低扁平率化すなわちロープロファイルタイヤの普及が加速した感があります。

 

見た目にカッコいいロープロファイルタイヤですが、これには問題がないわけではないのです。

ロープロファイルタイヤを装着することで起こる問題、リスクも存在します。

本日はそれを纏めてみました。

 

リスクその1:ホイールにガリ傷が入りやすくなる。

 

タイヤのサイドウォール部分の高さが低くなるということは、ホイールのリムが地面に近づくことを意味しています。

そうなれば、縁石ギリギリを走行したり、縁石に寄せて駐車しようとしたりすれば、ホイールのリムを傷つけてしまうリスクが増えてしまうのです。

ちょっと極端な例ですが、ランサーエボリューションのラリー車を例にとって考えてみましょう。

ランサーエボリューションのラリーにおけるタイヤサイズは、グラベル用が215のタイヤ幅で扁平率が65%のラリータイヤ、ターマック用は255のタイヤ幅で扁平率が40%のSタイヤだと思います。

それぞれのタイヤのサイドウォール部分の高さは、65扁平のラリータイヤが約140㎜、40扁平のSタイヤは約100㎜となります。

街中で縁石に寄せて走行する場合、前者はホイールリムが40㎜も上にあるので、その分ホイールにガリ傷が入るリスクが下がるのです。

その一方で、ロープロファイルタイヤを装着しいている場合は、ホイールにガリ傷が入ってしまうリスクが高くなってしまうのです。

 

リスクその2:エアボリュームを確保できず、タイヤのエア圧が変化しやすくなってしまう。

 

ホイールの外径のインチアップを行った際にタイヤの外径だけに合わせて単純にロープロファイル化してしまうと、タイヤ内に充填できる空気の量が減少してしまいます。

それを避けるためインチアップの際はタイヤ幅を太くすることでタイヤ内に充填できる空気の量を確保することが必要になるのです。

但し、タイヤがフェンダーから外にはみ出る、またはサスペンションアームやフェンダーアーチに干渉してしまうことにもなるので、闇雲にタイヤ幅を太くすることはできないためこの方法には限度があります。

車両に装着できるタイヤ幅の限界を超えてインチアップする場合は、タイヤ横幅は増やせない一方で、タイヤのサイドウォールの高さだけが減るので、その分タイヤ内に充填できる空気の量も減ってしまいます。

タイヤ内に充填する空気の量が減ると、タイヤの受ける摩擦熱により空気が熱膨張することを抑制しにくくなり、結果的にタイヤの接地面の形状が変化してしまいタイヤのグリップを最大限引き出すことができなくなってしまうことになりかねません。

例えば、二つの鍋に異なる量の水を入れた状態を想像してみてください。

一方の鍋にはなみなみと水が注がれ、一方の鍋には底が見えなくなる程度しか水が注がれていない状態です。

この状態で同じ火加減で熱を加えると、水が少ない方の鍋はあっという間に沸騰して蒸発してしまいますが、なみなみと注がれた鍋の水は、同じ時間、同じ火加減で熱を加えられても少し温んだ程度にしか温度が変化しないはずです。

タイヤの中の空気も充填された容積が大きい方が温度変化しにくいのです。

タイヤ内に充填された空気の温度が上がりすぎてしまえば熱膨張がおこり、それによりタイヤトレッドの中央部分が膨らんでしまい、タイヤの接地面積が減少するので本来のタイヤグリップが発揮できなくなることが起こるのです。

タイヤ内の空気の量が確保できない程のタイヤのロープロファイル化は、百害あって一利なしということになると思います。

最近では、WEDS SPORT RN-05MやSTI Performanceの様にホイール内に充填される空気の量、エアボリュームに配慮したホイールも発売されています。

WEDS SPORT RN-05M 18inch 8.5J offset+45mm PCD114.3mm-5H重量計測結果

STI Performance 18inch 8J offset+53mm PCD114.3mm-5H重量計測結果

 

リスクその3:突起物を踏んだ場合、ホイールの内リムを変形させてしまう。

 

タイヤのサイドウォールの高さがないということは、ホイールに組付けられているタイヤ自体の厚さが薄いということになります。

この様な状態で路面の石等を踏んだ場合、仮にタイヤのトレッド面で踏みつけていてもタイヤだけではその入力を吸収しきれず、ホイールまで達して変形させてしまうことが稀にあります。

低扁平率タイヤのリスク1

低扁平率タイヤのリスク2

このホイールには35扁平のタイヤが取り付けられていて、エアは漏れていないにも関わらず内リムに変形が見られました。

持ち主は車体からホイールを外してみるまで変形に気付かずにいたようです。

明らかに何かを踏みつけ、その衝撃がタイヤだけでは吸収しきれずホイールの内リムまでおよび変形したものと思われます。

扁平率35%にもなると、のタイヤ自体の厚みがかなり薄いので、ちょっとした突起物を踏むだけでこの様なことが起きかねないのです。

その意味では無暗にタイヤをロープロファイル化するのはリスクが大きいのですが、最近はエアボリュームの確保のために内リムを深く掘り下げたホイールも存在するので、そういったホイールをチョイスすると安心だと思います。

画像はSTI Performanceの内リムの掘り下げ具合を撮影したものです。

STI Performance

STI Performanceのエアボリューム

STI Performanceのエアボリュームとの比較

画像で見ると大きな差が無いようにみえますが、比較対象のホイールと比べると5mm以上は掘り下げられているようです。

路面からの入力をホイールが受けた場合は、この5mmの差が致命傷を避けることもあるので意味のある差だと思っています。

 

さて、本日はロープロファイルタイヤがもたらすリスクとエアボリュームの重要性について纏めてみました。

カッコいいロープロファイルタイヤですが、行き過ぎると良くない点もあることがお分かり頂けたと思います。

何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」、程度を考えた方が良いのだと思いますね。

 

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