ホイールにクラック発見! 溶接による修理は有り?無し?
ホイールに起きるトラブルの代表的なものとして、ホイールに入ってしまうヒビ、クラックがあります。
ホイールに入ったクラックを溶接することで修理している例がありますが、あれって大丈夫なのでしょうか?
今回は、
「ホイールに入ったクラックを、溶接によって修理するという選択肢は有りなのか?」
を考えてみました。
ホイールにクラックが入ってしまうと、そこからエア漏れして、タイヤは機能しません。
溶接してクラックを塞ぎ、エア漏れが止まれば、何の問題も無いのでしょうか?
そもそも、ホイールに何故クラックが入ってしまうのか?当サイトでは、過去に2回、そのテーマで記事を書いています。
その中でクラックの原因を、
- 金属疲労
- 熱の影響
としています。
ホイールのクラックの原因をおさらいした上で話しを戻すと…、
それを生業とされている方がいらっしゃるので、「だと思う」と表記しますが、
ホイールクリックの溶接修理は「無し」だと思います。
そう考える理由は、溶接した箇所が、
熱により伸縮してホイールが歪む。
脆くなり、新たなクラックを誘発する。
からなのです。
溶接修理するとホイールが歪む?
アルミに限らず、金属の溶接は、対象物を熱で溶かし接合させます。
その際に対象物が熱で溶け膨張し、冷えて固まり、収縮するため、対策を何もせずに溶接した場合、溶接した箇所から歪みが生じるらしいのです。
対策としては治具でがっちり固定して、歪みを抑えるなどの策があるのですが、そこまでやれる業者は少ないと思います。
少し前に、街の板金屋さんから、アルミボディの車両のボディパネルの溶接について、「アルミボディを溶接すると、その周辺が伸びちゃうので難しいんだよねぇ」という話しをしているのを聞いたことがありますが、精度の高いアルミ溶接は技術的に難しいということなのでしょう。
溶接修理するとクラックを誘発する?
「何故ホイールにはクラックが入ってしまうか?」というテーマで書いた2回目の記事の中で、金属の熱処理について触れ、焼き入れしただけのアルミは、硬くなるが脆くなると書いています。
競技車両のボディ補強のプロからも「溶接した箇所は脆くなるから、溶接を避ける箇所もある」という話しが出るくらい金属の熱処理には気を使うべきことなのです。
それにもかかわらず、アルミが溶ける程の高熱で、ホイールを溶接修理すれば、強靭性を回復する焼き戻しをしない焼き入れを行うことと同じなのです。
これでは溶接修理した箇所が極度に脆くなること間違いありません。
実際、溶接修理したホイールは、溶接箇所近くに新たなクラックが発生して、結局廃棄に至る例が多いのです。
歪む可能性が高い上に、すぐに別なクラックが入ってしまうホイールの溶接修理、あなたならやりますか?やりませんか?
私ならやらないと思います。
金属疲労が蓄積され、ブレーキ排熱など熱の影響を受け続けた結果、クラックが入るのですから、その時点で、そのホイールは寿命を迎えたものとして諦める必要があるのかもしれません。
悲しいですが、アルミホイールは、所詮消耗品に過ぎないのです。
それでも、クラックの修理したい場合、溶接以外の方法はないのか?
それでもクラックが入ったホイールを修理したい場合、溶接以外の修理方法はないのでしょうか?
まだ確立された修理方法ではありませんが、近い将来、ホイールのクラック修理に接着剤が使用される時代が来るかもしれません。
最近アウディなどは、アルミボディの一部を溶接ではなく、エポキシ樹脂系の接着剤による接合を始めています。
エポキシ樹脂系接着剤は、強度・耐熱性・耐薬品性・接着性に優れており、硬化収縮が小さいのが特徴なのだそうです。
これらの技術応用により、アルミホイールのクラックも、接着剤による補修が可能になる時代が来るかもしれませんね。