フローフォーミング加工の特徴とホイールメーカー各社での呼称

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「ホイールは軽けりゃ良いのか?」 軽量化が効く部分

当サイトでは、アルミホイールの重量を計測して、順次公開していますが、「ホイールは軽さこそ全て」と主張している訳ではありません。

ホイールは「軽量であればあるほど良い」としたら、強度・剛性やコストを度外視したホイールばかりになってしまうと思うからなのです。

軽量ホイールのメリット・デメリット」のページで、軽いホイールが適した車種や状況、またその逆の場合もある、とお伝えした通り、ホイールを選択する際に、その重量情報も公開されていれば、最適なホイール選びの参考になると考えたからなのです。

軽量ホイールのメリット・デメリット」のページはこちら

「軽量ホイールのメリット・デメリット」のページでも書いていることなのですが、ホイールの重量が、自動車の動きに、どの様な影響を及ぼすのかを、もう一度整理してみます。

 

ホイールの重量が、自動車の挙動に影響を及ぼす点は、主に2つあります。

①サスペンションストロークへの影響

「サスペンションストローク」とは、サスペンションが上下に伸び縮みする動きのことですが、これにはホイール全体の重量が影響します。

サスペンションに付いているタイヤ・ホイールは、バネにぶら下がる錘の様な存在なのです。

錘をバネにぶら下げて、上下に動かしてみれば、重い錘の場合は、バネが大きく伸び縮みしますが、軽い錘ならば、そうはなりません。

同じサスペンションでも、ホイールが軽ければ、上下の動きは小さくなり、路面の凹凸にサスペンションとタイヤ・ホイールが追従しやすくなります。

荒れた路面を走行するラリーなどの競技においては、路面追従性が悪化すると、タイヤが接地しない=駆動が伝わらず、トラクションが低下するため、小まめにホイールに付着した泥を落とすくらい神経を使います。

一方で、ホイールが軽過ぎると、サスペンションが上下に動き難くなる分、路面からの入力がダイレクトに乗員に伝わる=乗り心地が悪くなるデメリットもあります。

逆に、ホイールが重ければ、サスペンションはストロークし易くなるので、乗り心地が柔らかいと感じられますが、路面の凹凸に追従しにくくなります。

 

②ホイールの慣性モーメントへの影響

アクセルを踏めば、タイヤ・ホイールは回転し、ブレーキを踏めば、タイヤ・ホイールは回転スピードを落とし、やがて停止します。

ホイールが重いと、アクセルを踏んでも、なかなか回転スピードは上がらず、ブレーキを踏んでも、直ぐには止まれません。

逆に、ホイールが軽ければ、回転しやすく、止まりやすいのです。

これは慣性モーメントによる作用で、”一般に、剛体の慣性モーメントは、剛体の質量に比例し、質量が軸から遠くに分布しているほど大きくなる。”とされています。

例えば、あなたが10kgの米袋持って回転するとしましょう。

米袋を胸に抱いて回転するのと、両手に持って、振り回しながら回転するのではどっちが回転しやすく、止まりやすいでしょうか?

当然、回転軸から近い位置に米袋を保持する、胸に抱く方ですよね。

どちらの総重量も、あなたの体重+10kgであることに変わりがありませんが、回転軸に対して何処に重量があるかで、大きな違いが出るのです。

ホイールの外周部分とは、主にリム部分と言うことになるのですが、この部分が軽いと、回転しやすく、止まりやすくなります。

簡単に言えば、アクセスレスポンスが良くなり、制動距離が短くなるのです。

その一方で、アクセスワークに対して、速度変化しやすくなるわけですから、高速道路などで一定速度を保って走行するのには少し不向きかもしれません。

 

まとめると、

ホイール重量が影響するのは、サスペンションの上下運動とホイールの回転運動の二つ。

上下運動にはホイール全体の重量が、回転運動には、ホイール外周の部分的な重量が主に影響します。

 

ホイールの重量が分かれば、最適なホイール選びに役立つと言いました。

しかし、ホイールの全体重量は、調べれば分かりますが、ホイール外周部分だけの重量は、秤で計っても分かりませんし、データも開示されていないため、厳密には分かりません。

仮に、同じ18インチ8jで、8.5kgのホイールが3つあったとしましょう。

この中で、ホイールの外周部分が軽いホイールを選ぶとしたら、どうすれば良いのでしょうか?

ホイールの外周部分が軽いホイールを選ぶためには、ホイールの製法に注目すると良いと思います。

中でも、「スピニング加工」や「フローフォーミング加工」と呼ばれる製法で作られたホイールのリム部分は、ホイールの原型を回転させながら、リム部分を延圧する製法で製造されているため、リム部分が薄肉で軽量になっています。

「スピニング加工」と「フローフォーミング加工」の説明については、日本スピンドル製造株式会社のサイト内に記載されていましたので、引用させて頂きました。

 スピニング加工とは、金属の板またはパイプ状の素材を回転させ、そこにローラーを押し付けて成形を行う、回転塑性加工の1種です。イメージは陶芸のろくろと同じであり、ろくろ(主軸)に粘土(素材)を取り付け、回転させながら手(ローラー)にて少しづつ所定の形状に加工していくのと同じです。フローフォーミング加工とは、スピニングが比較的板厚の薄い板を曲げる加工であるのに対し、厚い板や塊に近い形状の金属を積極的に板厚に変化させる事によって様々な形に変化させる加工です。薄く伸ばしたり、一箇所に集めて厚くしてみたり、あるいは裂いて拡げたりと従来思いも付かなかった様な加工を行います。

 

加速しやすく、止まりやすいホイールが欲しいのならば、とりあえず、「スピニング加工」や「フローフォーミング加工」が施されたホイールブランドを選択すれば良いという訳です。

 

しかし、ホイールブランドの説明には、そのものズバリ「スピニング加工」とか、「フローフォーミング加工」とか書かれていないことが多いのです。

その理由はホイールメーカーによって呼び名が異なるからなのですが、購入する側としては、ちょっと分かり難いと思いますね…。

それなので、主要ホイールメーカーでの「スピニング加工」、「フローフォーミング加工」の呼称を以下にまとめ、各社のサイト上での説明も引用しています。

ホイール選びの際の参考にしてください。

 

 

RAYSのスピニング・フローフォーミング加工の呼称は「RCF

RAYSでは、スピニング・フローフォーミング加工を取り入れた製法を「RCF」としています。

RCFはレイズ キャスト フローフォーミングの略で、RAYSのサイトには

「スピニング(圧延)はお手のものRAYS RCF工法

鍛造ホイールに用いられる、スピニング製法を鋳造リム成型に用いて鋳造ホイールの性能を飛躍的にアップさせる。

それがRCF(レイズ・キャストフロー・フォーミング)工法です。

“鍛流線”に近い内部組織を、鋳造ホイール内部にもつくり出すことで強度の向上を図るRCFとその製造は、レイズが最も得意とする分野です。」

といった記載がされています。

https://www.rayswheels.co.jp/concept/technology.php?lang=ja&tech=3#

 

ENKEIのスピニング・フローフォーミング加工の呼称は「MAT

ENKEIでは、スピニング・フローフォーミング加工を取り入れた製法を「MAT-DURA FLOW FORMING」としていますが、一世代前のスピニング・フローフォーミング加工を取り入れた製法については「MAT PROCESS」としています。

 

ENKEIのサイトには

「終わりなき進化。 第2世代MAT PROCESS 『MAT-DURA FLOW FORMING』

鍛造ホイールや2、3ピースホイールのリム成形に用いられる「スピニング製法」を応用し、開発されたENKEI独自のリム成形方法。

鋳造工程後、リム部を鍛えながら引き伸ばし成形。

これにより、リムは鍛造に匹敵する強度を実現し、ディスクデザインは鍛造では成形不可能な自由度の高いデザインを施すことが可能となった。

そしてMAT PROCESSにおける最適なリム プロファイル(形状)の追求、製造工程細部にわたる最適化、モータースポーツでの実戦テストを経て確立された進化形・第2世代MAT、それが、「MAT-DURA FLOW FORMING」である。

従来のMAT PROCESSより更に緻密なメタルフロー(鍛流線)を形成させる事により、非常に優れた材料強度を実現。」

といった記載がされています。

http://www.enkei.co.jp/technology/method/index.php#matdura

 

WEDSのスピニング・フローフォーミング加工の呼称は「AMF

WEDSでは、スピニング・フローフォーミング加工を取り入れた製法を「AMF」としています。

AMFはアドバンスド・メタル・フォーミングの略で、WEDSのサイトには

「AMFのディスク面は従来の鋳造成型なので、デザインの自由度は保ちながら、リム部はスピニングマシンによって必要最低限の薄さで引き伸ばされているため、非常に軽量化され、バネ下荷重の低減に貢献するのです。

このような鋳造・鍛造両者のメリットを併せ持つ第三の製法が“AMF”(アドバンスド・メタル・フォーミング)いわゆるスピニング製法です。 ウェッズスポーツのブランドコンセプト「より速く、しかも安全に」を実現すべく誕生したAMF。

モータースポーツで鍛えられた新世代テクノロジーが、驚異のパフォーマンスで登場します。」

といった記載がされています。

http://wedssport.jp/amf/index.html

 

WORKのスピニング・フローフォーミング加工の呼称は「WFT

スピニング・フローフォーミング加工を取り入れた独自製法名の説明が、WORKのサイト内に存在していません。

代わりに、新製品紹介のページに2020年1月10日付で出ていた「WORK EMOTION ZR10 登場」というページ内に、WORK独自のフローフォーミング加工をWFT(workフローフォーミングテクノロジー)としているとの記載がありました。

「ワークフローフォーミングテクノロジー WORK FLOWFORMING TECHNOLOGY

WORKEMOTION CR kiwamiを筆頭にインナーリム部の成型は、鋳造完了した素材のリム部分に「圧力」をかけながら伸ばして成型するフローフォーミング製法を採用。

この製法で、より鍛えられたアルミのマクロ組織が微細化することでしなやかさが増し、 さらにリム部板厚の薄肉化による軽量化がプラスされることで鍛造に迫るメタルフローの実現に成功。

インナーリムに要求される「引っ張り強度」や「粘り強さ」を飛躍的に高めている。

同時に、アウターリム部も耐衝撃性に優れた設計にすることで従来の鋳造ホイールの性能を大きく飛躍させている。」

https://www.work-wheels.co.jp/wtopics/news/31/

 

SSRのスピニング・フローフォーミング加工の呼称は「FFT-R

SSRでは、スピニング・フローフォーミング加工を取り入れた製法を「FFT-R」としていますが、一世代前のスピニング・フローフォーミング加工を取り入れた製法については「FFT」としています。

FFTはフローフォーミングテクノロジー(FLOW FORMING TECHNOLOGY」)の略なのだそうです。

 

SSRのサイトには

「FFT-Rという技術革新

近年の製造方法の主流は、鍛造と鋳造の長所を合わせ持つ、フローフォーミング製法。 造形の自由度の高い鋳造製法をベースに、リム部分をスピニング(圧延)成型する製造方法を指します。 SSRではフローフォーミング製法をさらに高度化した新技術『FFT-R』を開発。 リムの鍛圧により、アルミ組織の密度を上げ、メタルフロー(鍛流線)を生成。剛性を飛躍的に高めています。さらにリムの強度をホイール全体の構造から割り出す設計とすることで、よりシビアな肉薄化を実現し、軽量化へと繋げました。

 

FFT-R製法でリム強度を十分に確保すると、ディスク面のデザインの自由度もさらに高まります。応力集中が少ない部分はスポークを細めたり、ディンプルで肉抜きを施すなど、駄肉を削ぎ落とすことで、よりスポーティでスタイリッシュなホイールへと昇華。SSRではFFT-Rによるリム成型の可能性を常に追求し、最高の性能を目指して取り組んでいます。」

といった記載がされています。

https://www.rd-tanabe.com/ssr/technology/system_1piece.html

 

OZのスピニング・フローフォーミング加工の呼称は「HLT

OZでは、スピニング・フローフォーミング加工を取り入れた製法を「HLT」としています。

HLTはハイライトテクノロジー(HIGH LIGHT TECHNOLOGY」)の略のようです。

 

OZのサイトには

「HLT ハイライト技術

ホイールの軽量性特性を改善する製造技術で、最も厳格なテストを凌駕するためのさらに高性能な運転力学と構造的完全性をもちます。

HLT生産プロセスで見られる革新と卓越は、F1への供給経験の直接的結果です。モータースポーツ競争の最高峰においてオーゼットはF1からまねのできない知識リソースを創り上げてきました。HLTの排他的製造プロセスは重量低減と構造的強度の両方において鍛造ホイールと同等の機械的機能を達成しています」

といった記載がされています

https://www.ozracing.com/jp/world-of-oz/technology/production

 

TSWのスピニング・フローフォーミング加工の呼称は「ROTARY FORGED

鍛造ホイールで有名な国内メーカーのTWSとちょっと間違えてしまいそうな、TSWですが、こちらは「タイガースポーツホイール」の略称をメーカー名とする海外ホイールメーカーです。

このTSWでは、スピニング・フローフォーミング加工を取り入れた製法を「ROTARY FORGED」としています。

スピニング・フローフォーミング加工を取り入れた独自製法名の説明が、TSWのサイト内に存在していませんが、Nurburgring RF(ニュルブルクリンク ロータリーフォージド)というホイールブランドのページ内にROTARY FORGEDの説明が記載されていました。

「※本ホイールはロータリーフォージドです。

ニュルブルクリンクは、「ロータリーフォージング」と呼ばれる最新鋭の技術によって製造されています。

ホイールのリムは、高速度で回転させられながら、高い圧力で鍛造されます。

この作業は分子構造を変化させ、合金の強度を高めます。

長所として、通常の鋳造ホイールよりも軽いという点です。

また、アウターリムが軽くなることによって劇的に回転量を減らし、車のパフォーマンスを高めます。」

http://tswwheels.jp/wheel_spec.php?wheel_id=15

フローフォーミングなのでホイール自体は鋳造なのですが、回転(ROTARY)させながらリムを成型し、鍛造と同じ構造を得ることからFORGEDとしているようですが、社名と同じくちょっと紛らわしいですよね…

アルミホイール加工機なんてものが販売されているんだ⁉

 

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