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アルミホイールの製造法は、溶けたアルミ合金を型枠に流し込んで作る安くてデザイン性に富んだ鋳造製法と、プレス機で圧力をかけて成型し、軽量かつ高剛性の鍛造製法に大きく分かれます。

現在は、二つの製法の良い所採りした製法・加工方法も存在します。

ここでは、そんな奥深く多様なアルミホイールの作り方についてまとめてみました。

 

・鋳造製法:多くのアルミホイールに採用される低コストな製法

溶かしたアルミ合金を型に流し込み、冷やして固めた後に細かい形を切削して成型するホイールの製法。

型による成型なので、複雑なデザインも作り易いのが特徴。

プレスして成型していく鍛造製法のアルミホイールよりも製造コスト面で優れているので、純正のみならず、多くの社外ホイールでもこの製法で作られている。

その一方で、強度を保つためには肉厚にせざるを得ず、重量は重くなりがちなのがデメリット。

鋳造製法と一口に言っても、以下のようなバリエーションが存在し、最近は重量面のデメリットを軽減した製法・加工方法も存在します。

・重力鋳造法

溶かしたアルミ合金を自然な重量によって型に流し込む、一番一般的な鋳造方法。

重力の影響を受けやすい金型の下の方に分子構造が偏りやすく、金型の上の方は脆くなりがち、気孔=所謂「す」が入る状態になり易いのが欠点です。

・低圧鋳造法

分子構造が偏り易い重力鋳造法の欠点を補ったのが低圧鋳造法。

溶けたアルミ合金に低圧ガスを加えながら、金型に充填する方法。

重力鋳造法とは異なり、圧力をかけて充填しているため「す」は入り難くなっています。

・ダイカスト法

型の中の空気をガスで追い出した後、溶けたアルミ合金を噴霧注入する方法。

圧力をかけて型に吹き付けて成形するので、低圧鋳造法同様に重力鋳造法と比較すると、「す」は入り難いと言えます。

 

鋳造製法だけれども、部分的には鍛造製法とも言える、一歩進んだ製法・加工方法もいくつか存在します。

 

・フローフォーミング加工

鋳造工程により成型されたアルミホイールのリムを、スピニングマシンで圧力を加えながら成型する技術のこと。

フローフォーミング加工は、リム部分に鍛造のような力が加わることで金属組織が緻密になり強度がアップし、従来の鋳造ホイールに比べて格段に肉薄化できることから軽量化も実現できます。

このフローフォーミング加工は、リムだけの部分的な鍛造製法と言って良いでしょう。

その成型過程は、さながらろくろで回しながら形作る陶器みたいな感じと言えば分かりやすいかもしれません。

肉厚なリムしか出来ない土器のような一般的な鋳造製法のアルミホイールとは異なり、ぐるぐる回しながら力を加え、リムを薄く延ばしていく様がろくろによる陶器作りによく似ているからなのです。

・スクイズ製法/半溶解鍛造製法(SSF)

鋳造の手法を用いながら、鍛造に匹敵する強度を実現した製法。溶けたアルミ合金を金型に流し込み、それが固まりかけたときに、さらに高圧をかけてアルミ合金を鍛え、均一化させる製法。

かける圧力や使用する原料によって呼び名が異なる製法が多数存在し、鋳造製法に分類されている場合もあれば、鍛造製法の一つとして紹介されていることもある。

一般的な鋳造製法と鍛造製法の中間的な製法と言えるでしょう。

 

・鍛造製法:熱して叩いて成型 、日本刀のように熱した合金に高圧を加え成型する製法

 

高温に熱したアルミ合金にプレス機で高い圧力を加え、大まかに成型した後に細かい部分を切削加工して成型するホイールの製法。

生産に手間がかかることや、生産設備自体が大掛かりなものであるため、コスト面では鋳造製法に及ばず、ホイールの価格は高価になりがちです。

その一方で鋳造製法では実現し得ない軽量かつ強度の高いホイールを製造できることが特徴です。

軽量を謳う高価なレーシングホイールは、この製法で製造されているものが多いのです。

鍛造製法についても、温度やプレスのかけ方等で、幾つかバリエーションがあるようであるが、何れの方法であっても、圧力をかけることでアルミの金属組織の強度を高めるファイバーフロー(鍛流線)が作りだされています。

鍛造製法が軽量なのは、ファイバーフロー化された高い強度の金属組織により、鋳造製法のホイールと比べて、リムやスポーク部分等をより薄く、より細くしたとしても、鋳造製法並みの強度が維持できるので、結果として軽量なホイールが製造できるのです。

その一方で、鍛造製法はプレス機によって押し潰しながら成型するので、いわゆる回り込むような形状や重なり合う形状が一般的に不可能とされ、複雑なデザインのホイールが作り難いが欠点となります。

いくつか存在する鍛造製法のバリエーションの中で代表的なのは、一般的な金型鍛造製法と、マシニング加工技術の進歩とともに最近増えてきた切削鍛造製法の二つです。

 

・金型鍛造製法

 

ホイールの素材となる柱状アルミ合金から切り出したビレットを、ホイールデザインのキモとなるディスク部分のデザインが施された金型をセットした8000トンから10000トンの高圧プレス機で加圧してホイールの原型を製造し、フローフォーミング加工を施してリム部を延圧した上で、マシニング加工等で表面処理を行い、ホイールを製造していく方法です。

 

2019年のオートサロンのBBSブースで、鍛造ホイールの製造工程が展示されていたので撮影してきました。

 

素材となるビレットの状態

 

ディスクデザインが施された金型でプレスした状態

 

スピニング加工によりリム部をフローフォーミングした状態

 

切削してスポーク部の隙間などをくり抜いた中間仕上げの状態

 

仕上げした完成状態のBBS鍛造ホイール

 

 

・切削鍛造製法

 

近年目覚ましく進歩したマシニング加工技術により、デザインが複雑なディスク部分を切削により成形する鍛造製法なのです。

 

金型鍛造製法と異なる点は、金型を用いずにメダル状に圧縮したビレットをスピンニング加工によりリムを延圧した後、平らなディスク部分をコンピュータ制御された切削用のマシンで掘り進めて、切削によりディスク部分を成形する製法なのです。

 

金型鍛造製法は、高圧プレス機と金型の両方セットで必要となるため、限られたメーカーでしか製造できず、日本国内では自前の高圧プレス機を持つRAYS、BBS、TWSの3社くらいしか金型鍛造製法のホイールは製造できないのです。

 

対して、切削鍛造製法ならば、マシニング加工用の機材と、メダル状に圧縮した鍛造ホイールの原型さえ入手できれば、その他のメーカーでも鍛造ホイールが製造できるのです。

 

鋳造ホイールを中心にブランド展開していたホイールメーカーが、近年鍛造ホイールをリリースしているのは、マシニング加工の機材を揃え、国内外から加圧済みのホイール原型を入手し、切削鍛造製法でホイールを製造することが可能になったからなのでしょう。

 

高圧プレス機が不要な分、高額な設備投資も不要となる切削鍛造製法のホイールは、製造コストの面でも有利であることから、近年その数が増えて来ているのだと思います。

 

所謂アメ鍛と言われる海外製大口径鍛造ホイールも、比較的低コストで鍛造ホイールが製造できる切削鍛造製法で作られていると聞けば頷けますよね。

 

さて、ここまでホイールの製法について纏めてきましたが、鋳造製法、鍛造製法ともに長所短所が存在し、「どちらの方が優れた製法なのか?」ということはありません。

何を重視するのかによってホイールの製法は選択されているのだと思います。

 

あなたに合ったホイールはどんな製法のホイールなのでしょうかね?

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